社長外遊記は1963年(昭和38年)の東宝映画
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おなじみ森繁久弥の社長シリーズである。外国旅行自体が持ち出し外貨の規制で容易には行けなかった1963年では、ハワイは日本人にとってはまさに夢の楽園である。その時代に社長シリーズの森繁久弥の社長、加東大介の常務、三木のり平の営業部長、小林桂樹の社長秘書のおなじみ4人組を中心に海外ロケを張るのは画期的だったろう。そこに加わるのがフランキー堺である。日系三世の設定で異質な日本語を話しながら酒を飲んで大暴れ、この奇想天外なパフォーマンスもこの映画の見どころである。
銀座に店を構える丸急デパートの風間社長(森繁久弥)には先代からの補佐である大島常務(加東大介)、宴会部長こと珍田営業部長(三木のり平)、社長直属の秘書(小林桂樹)の腹心が周囲を固める。家庭では妻(久慈あさみ)との間には5人の女ばかりの5姉妹がいる。ハワイから日系三世の雑貨商ジョージ沖津(フランキー堺)が来日してきた。風間社長の自宅が進駐軍に接収された時にジョージが住んだという旧知の仲である。今回は商品仕入れに来日したのだ。
社長からジョージを紹介された珍田部長は早速「パーとやりましょう!」と上機嫌で新橋の料亭を芸者付きでセットする。社長はその夜銀座のマダム(草笛光子)から折り入って相談があると逢引きの約束があり、秘書の中村も心を寄せていた春江(藤山陽子)と会う約束だった。珍田部長が2人に有無も言わせずに一気に宴会に突入する。酒を飲むとヒートアップするというジョージは大暴れ、社長はそそくさと帰り、幹事役の珍田部長も中村秘書に任せて早めに退散して宴席がとんでもないことに。
ある日大島常務が大慌てで社長室に飛び込んできた。商売敵の福助屋が香港へ進出するという情報が入ったのだ。先に海外進出への一歩を踏み出したと聞き、ならばこちらはハワイ進出でと作戦を練る。結局秘書の中村に現地で開業準備するように白羽の矢が立ち、結婚を申し込んだ春江と泣く泣く別れハワイへ単身駐在する。
やがて出店用地買収の候補地が見つかり社長、常務、営業部長の3人もハワイへ現地視察に向かう。到着早々さくら亭という現地の割烹で歓迎会をやる。社長は女将(新珠三千代)と知り合い、密会を試みるようになるのであるが。。。
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この社長シリーズも30作以上続いた。美女を見るとすぐ鼻の下を伸ばす森繁久弥社長がどんな美女とお近づきになれるかというのが毎度のテーマである。今回は銀座のマダム(草笛光子)に開店資金の援助を頼まれ、ハワイの割烹の女将(新珠三千代)と知り合いデートに結びつく2つの浮気がストーリーの鍵だ。
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「男はつらいよ」で渥美清演じる寅さんはいつも飛び切りの美女とお知り合いになるが、結局結ばれない。それと同じで、美女と一歩先のいい仲になれそうになるところで妻(久慈あさみ)が登場するのが毎度の構図である。この惜しさがキーポイント。
村上春樹は都築響一との対談の中で
「森繁の社長は人ごとながらとてもかわいそうな気がする。あともうちょっとのところなのに。」と同情する。
今回は娘が5人もいる。
長女の中真千子が父親に銀座のマダムといい仲なのをママにばらすと脅迫する。
自分の世代では次女の桜井浩子は「ウルトラマン」で、三女の岡田可愛は「サインはV」で活躍していたのをリアルタイムで見ていたので親しみがわく。なんと五女は上原ゆかりである。小さい頃「マーブルチョコ」のCMにでていて自分より少し年上だが、同じ子供なので羨望のまなざしで見ていた。
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あとは今の宴会では全く見ることができなくなった三木のり平宴会部長の宴会芸だ。古き良き日本の伝統を見せつけてくれる。フランキー堺演じる日系三世の歓迎会をセットする際、芸者は若い子でねと再三注文したにもかかわらず、きたのはババア芸者だ。昭和40年代に意地悪なおばあさんを演じさせたら天下一品だった武智豊子が芸者役で主演、それ自体ギャグだが、顔を見て落胆する三木のり平が笑える。
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ハワイへの渡航時には三木は周りに隠して宴会用カツラを荷物にしのばせる。おどける姿はハワイでも同じだ。加東大介常務は風呂敷の中に炊飯器を隠して渡航して、ご飯を炊いて社長にも日本式朝食を振る舞う。今じゃ考えられない話だ。
この映画には続編があって終わり方が中途半端だが、良き時代の東宝映画の楽しみが味わえる。

おなじみ森繁久弥の社長シリーズである。外国旅行自体が持ち出し外貨の規制で容易には行けなかった1963年では、ハワイは日本人にとってはまさに夢の楽園である。その時代に社長シリーズの森繁久弥の社長、加東大介の常務、三木のり平の営業部長、小林桂樹の社長秘書のおなじみ4人組を中心に海外ロケを張るのは画期的だったろう。そこに加わるのがフランキー堺である。日系三世の設定で異質な日本語を話しながら酒を飲んで大暴れ、この奇想天外なパフォーマンスもこの映画の見どころである。
銀座に店を構える丸急デパートの風間社長(森繁久弥)には先代からの補佐である大島常務(加東大介)、宴会部長こと珍田営業部長(三木のり平)、社長直属の秘書(小林桂樹)の腹心が周囲を固める。家庭では妻(久慈あさみ)との間には5人の女ばかりの5姉妹がいる。ハワイから日系三世の雑貨商ジョージ沖津(フランキー堺)が来日してきた。風間社長の自宅が進駐軍に接収された時にジョージが住んだという旧知の仲である。今回は商品仕入れに来日したのだ。
社長からジョージを紹介された珍田部長は早速「パーとやりましょう!」と上機嫌で新橋の料亭を芸者付きでセットする。社長はその夜銀座のマダム(草笛光子)から折り入って相談があると逢引きの約束があり、秘書の中村も心を寄せていた春江(藤山陽子)と会う約束だった。珍田部長が2人に有無も言わせずに一気に宴会に突入する。酒を飲むとヒートアップするというジョージは大暴れ、社長はそそくさと帰り、幹事役の珍田部長も中村秘書に任せて早めに退散して宴席がとんでもないことに。
ある日大島常務が大慌てで社長室に飛び込んできた。商売敵の福助屋が香港へ進出するという情報が入ったのだ。先に海外進出への一歩を踏み出したと聞き、ならばこちらはハワイ進出でと作戦を練る。結局秘書の中村に現地で開業準備するように白羽の矢が立ち、結婚を申し込んだ春江と泣く泣く別れハワイへ単身駐在する。
やがて出店用地買収の候補地が見つかり社長、常務、営業部長の3人もハワイへ現地視察に向かう。到着早々さくら亭という現地の割烹で歓迎会をやる。社長は女将(新珠三千代)と知り合い、密会を試みるようになるのであるが。。。

この社長シリーズも30作以上続いた。美女を見るとすぐ鼻の下を伸ばす森繁久弥社長がどんな美女とお近づきになれるかというのが毎度のテーマである。今回は銀座のマダム(草笛光子)に開店資金の援助を頼まれ、ハワイの割烹の女将(新珠三千代)と知り合いデートに結びつく2つの浮気がストーリーの鍵だ。

「男はつらいよ」で渥美清演じる寅さんはいつも飛び切りの美女とお知り合いになるが、結局結ばれない。それと同じで、美女と一歩先のいい仲になれそうになるところで妻(久慈あさみ)が登場するのが毎度の構図である。この惜しさがキーポイント。
村上春樹は都築響一との対談の中で
「森繁の社長は人ごとながらとてもかわいそうな気がする。あともうちょっとのところなのに。」と同情する。
今回は娘が5人もいる。
長女の中真千子が父親に銀座のマダムといい仲なのをママにばらすと脅迫する。
自分の世代では次女の桜井浩子は「ウルトラマン」で、三女の岡田可愛は「サインはV」で活躍していたのをリアルタイムで見ていたので親しみがわく。なんと五女は上原ゆかりである。小さい頃「マーブルチョコ」のCMにでていて自分より少し年上だが、同じ子供なので羨望のまなざしで見ていた。

あとは今の宴会では全く見ることができなくなった三木のり平宴会部長の宴会芸だ。古き良き日本の伝統を見せつけてくれる。フランキー堺演じる日系三世の歓迎会をセットする際、芸者は若い子でねと再三注文したにもかかわらず、きたのはババア芸者だ。昭和40年代に意地悪なおばあさんを演じさせたら天下一品だった武智豊子が芸者役で主演、それ自体ギャグだが、顔を見て落胆する三木のり平が笑える。

ハワイへの渡航時には三木は周りに隠して宴会用カツラを荷物にしのばせる。おどける姿はハワイでも同じだ。加東大介常務は風呂敷の中に炊飯器を隠して渡航して、ご飯を炊いて社長にも日本式朝食を振る舞う。今じゃ考えられない話だ。
この映画には続編があって終わり方が中途半端だが、良き時代の東宝映画の楽しみが味わえる。